# 感想文

# 「他人事」(平山夢明/集英社文庫)
「他人事」(平山夢明/集英社文庫)のうち、表題作「他人事」を読了。
 めちゃくちゃ嫌で、意味不明で、最高。久しぶりに平山夢明の本を読んだな~と思った。
 憎悪というハシゴを登りつめたあとに、ハシゴ外しどころかハシゴそのものが消滅して、でも体は地面に落ちることなくその場に張りつけにされて「???」という顔のまま動けなくなる、みたいな話。なんだそれはと思うだろうが、マジでそうなのだ。
 絞りに絞って放った弓矢が虚空に飲まれていくような、逆カタルシスを味わえるお話。途中の嫌すぎるグロテスクな描写や憎しみの表現にあれほど力が入っていなかったら、「オチに困って話を投げた」と思われてもおかしくないところ。途中があまりにもエグいからこそ、最後の落差にサウナのごとき"整い"(※1)が発生する。腕力があるから描ける話もあるのだと勉強になった。

※1 高温の蒸気風呂と水風呂の入浴を交互に繰り返すことで強制的にリラックス状態を作ることを日本では"整う"と表現することがある。健康的な行為であるかは意見が分かれている。

# 文庫版 近畿地方のある場所について」(背筋/角川文庫)
 「文庫版 近畿地方のある場所について」(背筋/角川文庫) を読み終わった。
 これで「近畿地方」は単行本版、映画版、文庫版と、3つの異なるバージョンが存在することになる。
 ホラー作品としてもっとも好きなのは単行本版。小説としてもっとも面白いと思ったのは文庫版。発表順的に意図したわけではないだろうが、映画版はその中間として良いバランスで製作されていると感じる。人に「近畿地方」をお勧めするなら映画版だろうと思った。

 文庫版では、単行本版で読者の想像に委ねられていた多くの部分が作中ではっきりと"謎解き"されている(※1)。読者サービスが強いなと感じた。雨穴作品を読んでいるような気持ちにさえなった。
 捉えようによっては単行本版や映画版を全否定しているとも考えられる筋になっていて、そういう意味でも面白い。同じ道具立てで真逆の話に作り変えられるというのは勉強になる。
 途中まで単行本版とあんまり変わらず退屈だったけど最後まで読んでよかった。


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※1: この謎解きが単行本版に対する"解答編"であるとは思わない。文庫版はあくまで謎を残さない形式の語りを採用したに過ぎず、物語の筋や帰結はまったく異なるというのが私の解釈。